[所在地]岡山県高梁市成羽町小泉

 開坑は伝承によるとの9世紀初め頃と言われており,昭和の中頃まで銅,亜鉛,鉛を採掘していた鉱山である。断続的に採掘され近くにある吉岡鉱山とともに当地の主要な銅山として一時は盛大に稼行していたらしい。地域の人にもよく知られている。安山岩質岩中の熱水鉱脈鉱床である。鉱山への入口には案内板が見られる。町道沿いに2つズリが広がっている。東側のズリは「帯ひ」と言われていた。道沿いに小屋があるが,鉱山とは関係ない建物だそうだ。西側のズリはかなり広く,鉱害のためか植生が少なく,この辺りの景色はかなり荒涼としている。ズリ上部には山神様と思われる神社がある。どちらのズリも坑口はまだ確認していない。最近は様々な砒酸塩鉱物が発見されたことにより,鉱物産地として知られるようになった。ズリには閃亜鉛鉱,方鉛鉱,黄鉄鉱,黄銅鉱,硫砒鉄鉱などの金属鉱物が見られ,ズリ石は褐鉄鉱に汚染されたものが多く,西側のズリには鉱滓も多い。また,孔雀石,ローザ石,水亜鉛土,白鉛鉱,ブロシャン銅鉱,青鉛鉱,硫酸鉛鉱などの二次鉱物も所々に見られる。東側のズリには一部に水亜鉛銅鉱,ポスンジャク石などが見られ,ビューダン石,ベイルドン石,ダフト石,ミメット鉱などの砒酸塩鉱物も産出する。ミメット鉱は黄緑色,白色,透明なものなど様々な色彩のものが見られる。西側のズリでも砒酸塩鉱物は同じように産出するが,ベイルドン石は特に白い母岩に鮮やかな緑色のものが見られ,針状,粒状,葉片状のオリーブ銅鉱,ダフト石なども見られる。その他最近,鉛ゴム石,洋紅石,セグニット石なども発見されている。脈石鉱物は石英,方解石が産出する。石英は白い塊よりも小さいながらも白い水晶が目につく。

 最近,この鉱山は保存を進めているようでズリで鉱物採集を行っていると注意されることがあるという情報がある。