[所在地]岡山県新見市大佐小阪部

 発見及び採掘時期の詳細は不明であるが,銅を採掘していた鉱山である。呼び名は「おうぎびらこうざん」か「おうぎひらこうざん」あるいは「おうぎだいらこうざん」か正確には不明である。また扇鉱山または大佐山扇鉱山となっている資料もある。坑口が2つ見られるがかなり古くに開坑したものらしい。また坑口の上部は崖地になっており,浮石があったりオーバーハングになっていたるため坑口付近,坑道は大変危険である。古生層の黒色千枚岩,花崗斑岩と石灰岩の接触交代鉱床である。それぞれの坑口の前にはズリがあり,黄銅鉱,閃亜鉛鉱,黄鉄鉱,硫砒鉄鉱などの金属鉱物の他に孔雀石,菱亜鉛鉱,水亜鉛土,アダム石,異極鉱様鉱物,斜灰簾石,緑閃石などの鉱物が見られる。資料によれば銅は5〜6%,亜鉛20%,砒素20%であったとされており,資料どおり閃亜鉛鉱,硫砒鉄鉱が比較的多く見られる。このズリにはかつて褐鉄鉱が所々見られ.その褐鉄鉱中にレグランド石,ケティヒ石(いずれも亜鉛の砒酸塩鉱物)などの珍しい鉱物を産することが知られているが,今ではこれらの珍しい鉱物はもちろんのこと,この褐鉄鉱もあまり見かけることがない。レグランド石は微細なものが多いため褐鉄鉱の茶色中に埋もれていたり,粘土で覆われていたりで現地での確認は難しい。また褐鉄鉱とともに柱状の薄い黄色,レモン色または油色をした一見レグランド石に見える鉱物を産する。この鉱物をX線回折分析したところ斜灰簾石と判明した。かなり濃色の黄色のものはレグランド石と考えて良さそうであるが,こうした薄い黄色,レモン色または油色をしたものは肉眼での同定が難しいため硬度の違い(レグランド石は4.5,斜灰簾石は6.5)を調べたりするなど同定に注意を要する。