[所在地]岡山県高梁市備中町布賀

 発見の具体的な時期は不明だが近年発見されたものと思われ,ごく最近まで石灰石を採掘していた鉱山である。世界的にも珍しい高温スカルン鉱床で余りにも有名である。通常のスカルン鉱床は,石灰岩地帯に花崗岩質マグマが貫入し生成される。花崗岩の固結温度は500℃前後であり,それよりもかなり高い温度,推定800℃以上で生成されたスカルン鉱床であるため,花崗岩質マグマの貫入でなく,より固結温度の高い玄武岩質マグマなどの貫入で生成されたものと考えられている。世界的にも珍しいが,日本ではこの布賀地域,岡山県三原鉱山,広島県庄原市,岩手県の赤金鉱山などが有名である。これらのうちでも布賀地域は群を抜いて有名であり数多くの珍しい鉱物が産出する。布賀鉱山周辺には,いくつかの露頭があった。その露頭には紫色や白色のスパー石を初めとしてゲーレン石,ティレー石,森本ザクロ石などの高温スカルン鉱物を産出し,鉱山そのものでは逸見石,五水灰硼石などの珍しい鉱物を産出する。図鑑には必ずと言っていいほど布賀産の鉱物が写真付きで掲載されている。
 
しかし,最近ではそれらの露頭や布賀の集落へ行く道から坑口へ行く道はすべて立ち入り禁止になってしまった。坑内に無断で入ることは絶対にやめた方が良い。また,この地域をうろうろすることも地域の人に誤解を与え兼ねないのでやめた方が良いと思う。現在,布賀産の鉱物を手に入れようとするなら,今まで採集した人に頂くか販売している標本を購入するかのどちらかで当面は現地で鉱物採集を行わないよう注意しなければならない。