[所在地]岡山県新見市神郷高瀬

 発見の詳細は不明であるが,大阪鉱山監督署編の「大阪鉱山監督署管内鉱区一覧 明治44年7月1日現在」の採掘鉱区欄には記載が見られる。具体的な閉山時期は不明だが昭和後期頃までクロムを採掘していた鉱山である。鳥取県,島根県,岡山県,広島県の県境付近には多くのクロム鉱山が稼行していたが,その中でもかつては日本屈指の鉱山であり,クロム含有量も他のクロム鉱山と比べて高かったようだ。高瀬の集落から南西に延びる道を進むと,左斜め前方の山の中腹に黒いズリが見えてくる。この道も鉱山まで延びており,車で乗りつけることもできるかもしれないが,途中から悪路になり自動車の腹を擦って故障したりパンクし たりする場合があるかもしれない。この道を最後まで進むと右手に大きな廃屋が見られる。その手前には積み出しの施設も見られる。廃屋の先は二段の大きなズリになっている。このズリの一番上と一番下では結構高低差がある。鉱床は蛇紋岩中の正マグマ鉱床である。ズリのほとんどは蛇紋岩であり一部に斑レイ岩が見られる。ズリにはクロム苦土鉱,方解石,苦灰石,アントレー石,灰クロムザクロ石,透輝石,苦土普通角閃石,葡萄石,菫泥石,クリノクロア,滑石,クリソタイル,曹長石などが見られる。その他,ボーリングコア中には割合最近発表されたプロト直閃石という珍しい鉱物も見られる。また斑レイ岩にはソーダ沸石,菱沸石−Caなどの沸石類が生成している。余り結晶の発達した鉱物は見られないが,見栄えのするクロム苦土鉱,灰クロムザクロ石はズリの上の方に見られる。なおクロム鉄鉱も産出するがクロム苦土鉱との肉眼での区別は難しい。また,廃屋手前にもズリが見られるが目立つ鉱物はなかった。