[所在地]岡山県苫田郡鏡野町羽出

 発見の詳細は不明であり,稼働時期の詳細も不明である。地元の70〜80歳の人の話によれば銅を採掘していたが,生まれた時にはすでに稼行していなかったということであり,稼行時期は大正時代から昭和時代初期ごろと考えられる。具体的な記述を書いた資料がほとんどなく,鉱物資源関係の文献に名前とビスマスを産出したという記述が出てくる程度である。かつて山口県の図書館で「足谷鉱山」という名称で記載されていた資料を見た記憶がある。先の人も鉱山があるのは足谷という谷だと話していた。岡山県鏡野町内には他にもビスマスの鉱床があり,この鉱山もその1つである。花崗閃緑岩中の高温の熱水鉱脈鉱床と思われる。この鉱山は岡曽山登山道の傍らにあり登山道を登っていくことになるが,登山道が寸断されていたり,鉱滓の散らばる薄暗い植林地を通り抜けたり,深い渓谷の際を通ったりしながら結構な距離を歩くことになるため山歩きに慣れていなければ簡単に行くことは難しい。また4月の初めでも残雪があり歩行に注意を要する。鉱山があった谷は沢になっておりズリと思われる石が積み上げられている。このズリでは輝水鉛鉱が見られる。またこの沢から登山道を少し登った所に坑口があり,この坑口から沢に向かって小さいながらもズリが雪崩れ落ちている。このズリではルーペで確認できる程度であるが花崗閃緑岩中にアイキン鉱が見られることがある。選鉱場は少し下流の小高い尾根にあったそうだ。2つのズリはどちらも小さくあまり鉱物は見られないが,よくよく探してみるとわずかながら鉱物が見られる程度である。かつて20cmくらいの石英塊が1つ見られ割ってみると立派な黄銅鉱,輝蒼鉛鉱,クルプカ鉱が出てきたことがある。また,この鉱石中には,顕微鏡大ながらウィチヘン鉱,亜鉛を含む不明鉱物も含まれている。その他,黄鉄鉱,泡蒼鉛,モリブデン鉛鉱などが石英の表面に見られることがある。
 
この地域は鏡野町でも熊の目撃例が多い所なので現地に行くには一応鳴り物などを用意しておいた方がよさそうだ。