[所在地]岡山県井原市芳井町簗瀬

 「岡山県地下資源調査報告書」によれば発見の時期は大同年間(806〜810年)と古く,江戸,明治,大正時代と断続的に稼行された。北側の山を隔てた向こう側には簗瀬鉱山があり時期によっては1つの鉱山だったこともあった。昭和16年に大同鉱山として旧坑を開削し採掘に着手したが3年で休山した。この付近は旧坑が多く百か所以上あったようだ。砒素,銅などを採掘していた鉱山である。岡山県西部〜広島県東部には砒素を多く産出した鉱山がいくつかあり,この鉱山もその1つだ。古生層粘板岩中の中温〜高温の熱水鉱脈鉱床と思われる。鉱山は市道から脇道を入った谷の奥の低い山の山腹にある。現地で聞き取り調査を行ったところ,採掘後しばらくの間,谷は採掘されたズリで覆われていたが砒素を多く産出していたことから鉱害防止のため全て埋めてしまったそうだ。谷の入口は茅が生い茂っており山に入るには苦労を要する。入口の右側に小さい植林地があり一部に鉱石が転がっている。沢筋から谷奥へと入るが,入口付近に人工的な素掘りの大きな溝が現れる。鉱山の何らかの遺構と思われる。その奥から茅の生い茂る原野をかき分けながら進んで行くと次第に茅などの雑草は減り林になる。林の中の山腹に斜坑が現れる。付近には孔雀石が1つ転がっていた。さらに山中を進むと斜面にズリが現れるが,ズリは鉄分が多いものの鉱物はほとんど見られなかった。植物が生えていないことから砒素が多く含まれているものと思われる。鉱山全体で見られた鉱物は閃亜鉛鉱,方鉛鉱,黄鉄鉱,硫砒鉄鉱,孔雀石,石膏,スコロド石などである。植林中や溝付近の鉱石は閃亜鉛鉱,方鉛鉱,黄鉄鉱,硫砒鉄鉱が入り混じる雑鉱がほとんどで,その一部が変質して貧弱な石膏,スコロド石が生成しているといった状況である。全体的に鉱物は少ない。