[所在地]岡山県美作市上山

 この鉱山に関する文献は英田郡編「英田郡誌」,東京地学協会発行の「日本鉱産誌」などがある。「日本鉱産誌」での鉱山名は上山鉱山(うえやまこうざん)となっているが,この鉱山と同一と思われる。あるいは上山鉱山として稼行した時期があったのかもしれない。「英田郡誌」によると発見の時期は天平宝字元年(765年)とかなり古く,美作国(岡山県北部の旧国名)最古の鉱山で慶長年間(1596〜1615年)に再採掘されたと記されている。「日本鉱山誌」の上山鉱山の欄には明治3〜13年盛況と記されている。また山陽新聞社編集「岡山県万能地図」には位置がずれているがなぜか場所がプロットされている。銅を採掘した鉱山である。岡山県北東部には銅を採掘した小規模な鉱山がいくつかあり,この鉱山もその1つである。中生層三畳紀頁岩と白亜紀礫岩との間にある中〜高温の熱水鉱脈鉱床と思われる。鉱山へは車道から林道のような道を進んで行くこととなるが,この林道のような道はどうやら電力会社の鉄塔の保守道にもなっているようだ。現地には林の中にズリと坑口が残されている。ズリは水流の跡でえぐられているがえぐられていない部分は古いズリになっている。入口付近の左側には鉱滓が多く見られ,当時現地で製錬していた様子がうかがわれる。岡山県北東部の小規模の鉱山では現地でかつて銅を製錬していた鉱山が多かったそうだ。坑口はズリを登った右側に見られる。坑口は大きく高さ2mほどある。確認された鉱物は金属鉱物では黄銅鉱,閃亜鉛鉱,方鉛鉱であり,二次鉱物では孔雀石,ラング石,サーピエリ石,水亜鉛銅鉱,白鉛鉱,青鉛鉱,緑鉛鉱,カレドニア石,珪亜鉛鉱,異極鉱,ソーコン石などである。このうち青鉛鉱は割合見られるが,水亜鉛銅鉱はごくわずかしか確認できなかった。緑鉛鉱は見栄えのするものが見られることがある。珪亜鉛鉱は西日本では初となる産出であり,脈状のものや微細な結晶が集合するもの,緑鉛鉱に共生するものが見られる。ラング石,サーピエリ石,カレドニア石,ソーコン石については希に見られる。造岩鉱物は石英,方解石,単斜灰簾石,シャモス石(緑泥石類),曹長石であるが,シャモス石(緑泥石類)は割合結晶がしっかりしているように思われる。