[所在地]広島県尾道市瀬戸田町宮原

  発見は大正時代の末期と言われ,断続的に稼行し,特に昭和19年から20年にかけて最も盛んにモリブデンを採掘していた鉱山である。高温の熱水鉱脈鉱床と思われる。鉱山名は旧村名の南生口村に由来するものと思われる。付近の山は花崗岩質で松が多く生えていたが,平成12年の山火事により木々の大半が焼失した。上の風景写真は山火事後あまり時間が経っていない時の写真である。鉱山は山火事の被害を余り受けていないが,すすけた鉱石も見られる。山の谷あいにいくつかの坑口があり,以前は索道がついていたため簡単に鉱山に行くことができたが,最近,西瀬戸自動車道(しまなみ海道)が鉱山の入口付近にできたこととその道路を守るための砂防ダムが2つできたことで簡単に行くことができなくなってしまった。また,それらの工事のためズリもかなり埋められてしまった。掘り出した鉱石は,鉱山から麓の小山の頂上にワイヤーを渡しロープウェイ方式で運搬していた。鉱床は含モリブデン石英脈で坑口付近の露頭で観察することができる。以前は下部のズリでも割合大きな塊状の輝水鉛鉱を見つけることができたが,最近はあまり見られない。しかし,鉱山の上部のズリには輝水鉛鉱,鉄重石,硫砒鉄鉱,黄銅鉱,黄鉄鉱などの金属鉱物や泡蒼鉛,鉄明礬石,石膏,ベトパクダル石−CaCa,ケヒリン石,毒鉄鉱などの二次鉱物が見られた。また,脈石鉱物は石英を主とし,蛍石,灰鉄ザクロ石,シャモス石が産出する。また確認できていないが放射性鉱物であるコフィン石,燐銅ウラン石も産出したという記録がある。珍しい鉱物としては,1つの坑口の壁面にラベンダー石が生成されていることも確認された。ただ,鉱山の上部は崖地になっており非常に危険である。