[所在地]広島県府中市荒谷町

 昭和13年に初めて開発され,同年から昭和19年まで稼行していたがその後は休山している。亜鉛を採掘していた鉱山である。当時は月産20〜30tの亜鉛鉱を出鉱していた。鉱床は粘板岩中の中温の熱水鉱脈鉱床と思われる。坑道は大切坑,中切坑,上坑の3坑あったようで,それぞれ連絡していた。大切坑は昭和24年当時にはすでに崩落し,入坑できない状態であったようだ。脈幅は中切坑では最大1m〜最小10cm,上坑では最大70cm〜最小10cmとされている。ズリは県道沿いに並行に高さ10m〜15m,幅30m〜40mの大きさで広がっている。資料によれば最上位の坑口は県道から60m上に開口しているということだが未確認である。ちなみにズリの上は植林地になっている。最初に訪れた時に見られた金属鉱物は黄鉄鉱,磁鉄鉱であったが主要鉱物の閃亜鉛鉱は全く発見できなかった。再度改めて訪れてみると確かに細粒の閃亜鉛鉱の塊が所々見られやはり主要鉱物であったようだ。熱水鉱脈鉱床であるが磁鉄鉱も産することは興味深いところである。結局確認できた鉱物は閃亜鉛鉱,黄鉄鉱,磁鉄鉱,菱鉄鉱で脈石鉱物では方解石,石英などが見られた。菱鉄鉱は閃亜鉛鉱中の空隙に薄茶色の球状,粒状を成して産出していた。以前,名称は岩谷鉱山(いわたにこうざん)としていたが,正確には瀬戸鉱山(せとこうざん)の方が正しいようだ。狭く曲がりくねっている県道のすぐそばにズリがあり交通の便は良いが,鉱物採集・観察を行うには魅力に乏しいように思われる。また府中市北部〜旧新市町(現福山市)にかけてはこのような銅,亜鉛を採掘した小規模な鉱山がいくつかあり,この鉱山もこれらの鉱山の1つである。