[所在地]山口県山口市中尾

 発見の詳細は不明であるが昭和後期に稼行し,銅,タングステンを採掘していた鉱山である。鳳翩山を中心とした地域には花崗岩体がある。この付近にはいくつかの鉱山があり,その中でも最後まで採掘していた鉱山で昭和61年に閉山した。山の谷あいの道を上っていくと右側にズリがある。ズリには鉱石を流した錆びた鉄製の流しやホッパーがある。ホッパーは道から見えず普通は藪に覆われた低い所にあり,冬や春先でなければ行くのは難しい。坑口は不明だが,このズリの少し上には施設跡と思われる小屋の残がいがある。中生代の角閃石黒雲母花崗閃緑岩中の低〜中温の熱水鉱脈鉱床と思われる。この鉱山は,バナジウム酸塩鉱物や鉛重石を産出することで有名である。ズリは花崗岩,花崗閃緑岩,石英がほとんどである。褐鉛鉱,モットラム石,デクロワゾー石は石英,花崗閃緑岩の表面に粒状または皮膜状を成して見られる。モットラム石とデクロワゾー石は成分分析を行わないと同定できない。以前はこの鉱山ではモットラム石は濃色を示し,デクロワゾー石は淡色を示すと書いていたが,淡い黄色のものでもモットラム石であることがある。黄色い鉱物をいくつか分析してみたがモットラム石が多かった。黄色い鉱物の一部がデクロワゾー石と思われるが産出はかなり少ないように思われる。またこの鉱山の主要鉱物である灰重石は花崗閃緑岩中に数mmの大きさで見られ,時々付近に鉛重石が見られる。ミネラライト下では灰重石は水色,鉛重石は薄い黄緑色を示す。金属鉱物としては少量ながら黄銅鉱,黄鉄鉱,方鉛鉱,輝水鉛鉱などが見られた。脈石鉱物としては石英,普通角閃石,緑簾石,方解石が見られた。
 
この付近は,クマの出没地帯らしく手前の分岐路にはクマ注意の看板が立てられている。また,冬の寒い時には雪が積もることがあるため,訪れる場合には季節を選んで行った方が良い。