[所在地]山口県萩市山田

  発見の詳細は不明であるが,東京地学協会発行の「日本鉱産誌」によれば昭和22年から昭和24年にかけて稼行したという記録が残っている。銅を採掘していた鉱山である。別名,青長谷地区にあることから青長谷鉱山(あおばせこうざん)ともいった。黒雲母花崗岩中の中〜高温の熱水鉱脈鉱床と思われる。この鉱山は海岸沿いにあり,銅の鉱脈と海水が作用してアタカマ石が産出することで有名である。日本海側の潮汐は瀬戸内海ほどの干満差はないので,一般的には水没することはないと思われるが,強風時には潮風が巻き上げられ露頭の銅の鉱脈と作用してアタカマ石が生成したのかも知れない。海岸沿いに沿って歩くといくつか坑口があり,しばらくするとズリが現れる。ズリは海になだれこんでいる。近くにコンクリート造りのやや大きめの施設跡が残っている。さらに先に進むとまたいくつか坑口が見られ,この先にアタカマ石の露頭があり一面が緑色で染まっている。ここから先は海の中を通って進む以外にないためこの先は調査していない。かつてはこのアタカマ石の露頭の上に木の杭をある程度の間隔で岩壁に打ち込み板を渡して桟道のようにして進んでいたと思われる遺構が残っている。ズリ中には黄銅鉱,黄鉄鉱,硫砒鉄鉱などの金属鉱物,所々にアタカマ石,ボタラック石,コンネル石などの海水と反応してできた二次鉱物が見られる。アタカマ石は塊状のものがほとんどであるが一部には微細であるが結晶を成しているものも見られる。ボタラック石は青味を帯びた緑色をしており,アタカマ石とは若干色調が異なっている。また量は少ないがオリーブ銅鉱,コーンウォール石,斜開銅鉱,スコロド石,アガード石様鉱物などの砒酸塩鉱物も見られる。スコロド石は灰黄色,ベージュ色,くすんだ灰緑色の粒状のものや皮膜状のものが所々見られる。斜開銅鉱はコンネル石と区別しにくいようなものもある。他には黄色塊状の鉱物が見られ成分分析を行ったところ鉄明礬石あるいはソーダ鉄明礬石であることが判明した。坑口や岩の窪みの水がかからないところには薄っすらと水色の胆礬が生成していた。脈石鉱物では石英,緑簾石,濁沸石が見られる。