[所在地]山口県岩国市由宇町

 発見の時期及び稼行の時期についての詳細は不明であるが,昭和の中〜後期に稼行したものと思われる。一説では昭和43年に休山したと言われている。珪石を採掘した鉱山である。中生層黒雲母花崗岩中のペグマタイト鉱床である。山口県の東部にある周東地域には小規模なペグマタイトがいくつかあり,このペグマタイトもそれらの1つである。鉱山は県道から川を渡った農地の奥の小さい沢にある。沢を少し入った所に坑口があるがさらにその横を登って行った所に径20〜30mの大きな窪みがあり,かなり大きく掘られた様子がうかがわれる。窪みの上の方にも坑口がある。ズリは石英,長石及び黒雲母が主に見られる。確認できた鉱物は,先の鉱物の他,モナズ石,ゼノタイムである。モナズ石の主な放射能元素はセリウムと思われるが詳しく調べていない。モナズ石,ゼノタイムのいずれも黒雲母に伴われる傾向があり,大きな黒雲母ほど含有されている可能性が大きい。15cm大の黒雲母を発見し割ってみたところモナズ石が挟まれていた。モナズ石は明るい茶色の柱状を成しているものが多い。モナズ石自体が脆いため黒雲母に挟まれたものは,真ん中で割れてしまうことが多いが,割れた断面の長さでは3cm弱のものも見られる。まれに母岩に結晶が突出してついているものが見られることがある。ゼノタイムも黒雲母に接して挟まれる形で産出するものが多い。色はペイジュ色,薄茶色,半透明のクリーム色のものが多く,大きさは5mm前後のものが多い。結晶は半球状で平らな面が黒雲母に接している。一般的にこれらの放射能鉱物は手前の沢や右側のズリの斜面などに産出することが多く,奥の大きく掘られた部分の窪みや斜面などではほとんど確認することができなかった。