[所在地]山口県周南市大字鹿野上

 「鹿野町誌」という郷土資料によると発見は明治15年とされており以降約70年間採掘していた。アンチモンを採掘した鉱山である。古生層砂岩中の低温の熱水鉱脈鉱床である。さらに市道を進んで行った所にある集落には坂根鉱山があり,同一の鉱床を採掘していたものと思われる。鉱山は集落の手前の山中にあったようだ。また鉱脈は1.5kmの延長があるようだ。両端の東部と西部に大きな採掘場があり,その間にいくつかの採掘場があった。地元の人何人かに聞き取りをした結果,いずれの人も山中には竪穴が多く開口しており,陥没の可能性もあり,山は奥深いので山中に入るのは危険だと話していた。山中でも山道のすぐ近くの植林された比較的危険度の低いという情報を得て西部採掘場を調査した。坑口は危険なため調査を行っていない。ズリは植林されて埋められているが,水流で削られた所にはズリが現れていた。ズリ中には黄鉄鉱,輝安鉱,黄安華,微細なバレンチン石様鉱物が見られた。この採掘場に行く間の砂防堰堤には,土砂が満杯に堆積しており,輝安鉱,メタ輝安鉱,黄安華が見られる。西部採掘場よりもこの堰堤の堆積場の方が結晶が集合した輝安鉱が見られる。市道沿いに集会所があり稼行当時はその付近が選鉱場だったようだ。その集会所付近から山に入る道があり,少し進むと道が川に水没している所がある。その水中や岸辺の付近に流れてきたと思われる輝安鉱が散在している。その他輝安鉱が変質してできた黄安華,わずかながら黄鉄鉱が見られる。脈石鉱物は石英及び方解石である。なお,西部採掘場,堰堤の堆積場はこの奥にあたる。また,以前大雨で鉱石が付近の川に流れ込んだことがあり,それを拾って売鉱していた人もいたそうだ。その川に流れ込んだ鉱石をたまたま所持している地元の人から,15cm大の輝安鉱の塊をいただいた。貴重な標本をいただいたことについてこの場で再度お礼を申し上げたい。
 付近は山口県でも1,2を争う頻度の高い熊の出没地帯であり,鈴などの鳴り物は必携である。また早朝や夕方などの時間帯や秋などの熊の出没頻度が高い時間,時期は避けたほうが良さそうだ。単独行動及び現地の掘り返しは厳禁である。また山中は奥深く,情報がない場合は危険であるため立ち入らないこと。