[所在地]山口県防府市大字奈美

 発見の時期は不明であるが,稼行の時期については地元の人の聞取りによれば昭和30年頃に稼行していたということである。地質調査所の「鉱物資源資料」にこの鉱山についての記載があり,稼行時期については大まかには一致していた。珪石を採掘していた鉱山である。中生層黒雲母花崗岩中のペグマタイト鉱床である。この鉱山もいくつかの鉱床があったようで,一番大きな鉱床は集落から延びる林道を奥深く進んで行き,さらに踏み分け道に入った奥にある。林道の終点までは自動車で行くことができるが,途中からは踏み分け道になるため徒歩となる。かなり山の深い所にあるので場所が分かりづらい。またこの林道は大雨などにより通行止めになることがしばしばある。その場合には山口市側から徒歩で山を越えていくこともできないこともない。この付近は平成21年の大雨により,あちらこちらで土砂崩れが起きており踏み分け道自体もかなり被害を受けている。ただかつてはこの踏み分け道も鉱石の運搬用トラックが通ったたものと思われる。踏み分け道は最後はつづら折りになっており,行き止まりはズリが雪崩落ちている。このズリの先は露天掘り跡になっている。山肌が削られており一部坑道を掘ろうとしたような所も見られる。この鉱床は防府市と山口市の境にあり,ズリの一部は山口市側に雪崩落ちている。ズリ自体は花崗岩,石英,長石が多く見られ,一部黒雲母が密集している所がある。その他見られた鉱物は磁鉄鉱,鉄カンラン石,プロト鉄直閃石などである。プロト鉄直閃石は,白色や薄い茶色を成していたため,プロトマンガノ鉄直閃石かと考えたが,成分分析によりマンガンより鉄が圧倒的に多いか,マンガンをほとんど含んでいないことからプロト鉄直閃石ではないかと思われる。