[所在地]山口県岩国市周東町祖生

 この鉱山の詳細な稼行時期は不明である。「地質調査所月報」によれば昭和30年前後に19人で手掘りにより探鉱していたとの記録が残っている程度で鉱山に関する資料にはあまり登場しない。銅,タングステンを採掘した鉱山である。銅は5〜7%の品位で,10%以上の高品位のものも見られたそうだ。タングステンは1〜1.5%程度だった。他には金15g/t,銀900g/tに達する鉱石も見られたようだ。鉱床は中生層の黒雲母花崗岩中の中〜高温の熱水鉱脈鉱床または気成鉱床と思われ,一部に母岩がグライゼン化作用を受けている部分もあるようだ。鉱床は数か所あったようで1か所は集落の近くの里山にある。山沿いの道路から踏み分け道を20〜30m程入った所にある。周辺は雑木林に囲まれ荒れているが,施設跡やわずかながらズリが残っている。坑口については確認できなかった。この場所は鉱床なのか選鉱場あるいは鉱石の集積場なのか不明である。鉱床のいくつかは山中にあるようだ。山中の鉱床は植林により大半が埋め戻されているが,わずかにズリや坑口が残っている。ズリ中には黄銅鉱,鉄安四面銅鉱,磁硫鉄鉱,硫砒鉄鉱,鉄重石,孔雀石,微細な鉄黄安華と思われる鉱物や脈石鉱物では石英が見られた。他には黒雲母片岩中に白色の柱状の紅柱石が見られた。「地質調査所月報」によれば他には斑銅鉱,細粒の灰重石が産出したようだ。他に褐錫鉱なども産出するとの情報もあるが,褐錫鉱は顕微鏡大である可能性が高い。他にもグライゼン化帯で放射能異常を示す場所があり,微小な放射能鉱物を含んでいる可能性がある。
 
地主さんの家が集落にあるので必ず地主さんの許可をもらって入山すること。また付近は猪の罠を設置していることがあるため立ち入る際には注意を要する。