[所在地]山口県山口市阿東徳佐下

 発見の詳細な時期は不明である。稼行の時期については,地質調査所発行の地質調査月報「山口県阿武郡・佐波郡下ロウ石鉱床調査報告」に大正時代初期から終戦時まで稼行されていたと記載されている。蝋石を採掘した鉱山である。中生層流紋岩中の熱水性の蝋石鉱床である。鉱山は国道から林道を進んで行った終点の先にある。林道はリンゴ畑のほとりを通り,次第に植林地内を通るようになる。終点付近は小さな広場になっている。しかし以前訪れた際は林道は倒木により自動車での通行はできなくなっていた。鉱山は小さな広場から茂みを通り抜けた右側の斜面にあり,小規模なズリや坑口が残っている。鉱山は北斜面にあり,小さな沢を隔てた向こう側には山の斜面が迫った狭隘部分にあるため,秋から春にかけては日中でも薄暗い。探索のため春の雨天の日の午前11時頃付近の植林地に立入ったが夜並みに暗く,全く探索できなかった。曇りの日や午後14時以降は暗さのため。ズリ石の判別も難しくなる。ただ夏至に近い日に訪れた際にはやや明るいものの後述する危険に見舞われることがある。ズリ中に見られる鉱物は葉蝋石,コランダム,デュモルティ石,シャモス石,微小な石英などである。このうち葉蝋石は前出の資料では良質のものが多いと記されている。デュモルティ石は山口県立山口博物館研究報告の渋谷五郎氏,亀谷敦氏著「山口県産鉱物目録」にも産出の記載があり,しばしば見られる。塊状の青色のものが多いが希に母岩に薄紫色の針状結晶が扇状に集合したものが見られることがある。
 山口県北部は熊の出没情報があり,現地は薄暗いため,鳴り物などを用意しておいた方が良さそうだ。また夏場に訪れた際,林道に草が生えた所があり,通行するうちにマダニが付着し咬まれたことがある。肌の露出を避け,ダニ除けスプレーを携行するなど注意を要する。