［所在地］岡山県高梁市落合町阿部 　岡山県発行の「岡山県地下資源調査報告書」の岡山県川上郡山宝，耕田，国吉，阿部鉱山調査報告によれば，発見の詳細は不明だが，明治初期に探鉱されたと伝えられていると記載されている。昭和１２～１５年に落合鉱山として統合され盛んに探鉱ざれ，後に休山となったとのことである。また，東京地学協会発行の「日本鉱産誌」にも昭和１２～１５年稼行と同様の記載が見られ，括弧書きで落合鉱山となっている。鉱山名は明治時代前半に存在していた阿部村または落合村に合併された後の大字に由来するものと思われる。中生層黒雲母花崗岩中の中温の鉱脈鉱床と思われる。銅を採掘した鉱山である。「岡山県地下資源調査報告書」によれば鉱床は銅，鉛，亜鉛鉱床と磁硫鉄鉱鉱床がそれぞれあったようだ。坑口はいくつかあったが，盛んに採掘されたのは上部坑と下部坑だった。上部坑の鉱脈は２～３ｃｍの𨫤幅で，富鉱部は１０ｃｍと膨宿に富んでおり，平均の銅品位は３～４％だった。一方下部坑の鉱脈は５～１５ｃｍの𨫤幅で，平均の銅品位は４～５％だった。鉱山は国道から山中に延びる市道の途中の沢の周辺にある。沢には細長くズリが雪崩れ落ちている。ズリを登ったかなり上には埋もれかかった坑口が見られた。先の資料の図面からするとこの坑口は上部坑と思われる。下部坑は沢から少しずれた位置にあったようで見つけることはできなかった。ズリにはわずかに閃亜鉛鉱，黄鉄鉱，クリプトメレン鉱が見られたものの参考程度のものであった。他に採掘の中心となった黄銅鉱や方鉛鉱，磁硫鉄鉱が産出したとの記録が見られる。なお，この鉱山の東側に稼行中の同名の鉱山があるが，問い合わせてみたところこの鉱山とは全く関係ありませんとの回答だった。