［所在地］岡山県新見市神郷油野 　「岡山県地下資源調査報告書」によれば昭和１０年頃稼行し，昭和２８年にも稼行した記録が残っているが，その後の休山または閉山記録は残っていない。クロムを採掘していた鉱山である。鳥取県，島根県，岡山県，広島県の県境付近には多くのクロム鉱山が稼行していたが，この鉱山もその中の１つだ。規模は小さかった。鉱区内の東部に２か所，西部に２か所の露頭が知られており，東部のうち１か所は探鉱坑道を掘進したが着鉱せず，もう１か所は昭和２８年当時稼行されていたようだ。西部は南北に転石が見られ，こちらの鉱床も稼行されたようだ。どちらの鉱床を大切坑としたのか不明だが，露頭部及び露頭よりやや下部を１，０００ｔ程度採掘し，その後この下部２０ｍの所を１，０００ｔ，さらにその下部を３００～５００ｔ程度採掘したが，湧水がひどくなり昭和２８年に採掘を取りやめた。その後排水ポンプにより排水を行ったとされるが，その後の経緯についての記載は見られない。鉱床は蛇紋岩中の正マグマ鉱床である。前出の資料によればクロム鉱物は塊状鉱で斑状鉱は見られないようだ。鉱物は，クロム苦土鉱，クロム鉄鉱，磁鉄鉱を主とし，クロム鉄鉱の含有量が幾分多く，少量のスピネル，蛇紋石類よりなり，わずかながらクロムザクロ石を伴うと記載されている。クロムの品位は良質部で３０～３２％で，低質部は３０％以下だった。鉱山はこの地区の里山の南斜面にあり，鉱山まで未舗装の林道のような道が続いている。林道の入口部分の道路脇には，この鉱山の貯鉱と思われるものがわずかながら見られる。貯鉱にはクロム鉱物は見られなかったが，リザード石などの蛇紋石類の表面に苦灰石，方解石が生成されたものが見られた。そこから林道を進んで行くと，左上の斜面に坑口が見られ，わずかながらズリも見られた。ズリではクロム苦土鉱が見られた。