［所在地］岡山県新見市神郷油野 　「岡山県地下資源調査報告書」によれば大正時代に発見され，大正年間，昭和１９年に稼行した記録が残っている。その後，昭和２８年には採掘のためか探鉱のためか不明だが坑道を掘進している。昭和１１年頃，当時の神代村の鍋倉治一氏の所有となったことが，鉱山名の由来になったものと思われる。その後の鉱山名が「広瀬神代鉱山」とも記されている。クロムを採掘した鉱山で，鳥取県，島根県，岡山県，広島県の県境付近には多くのクロム鉱山が稼行していたが，この鉱山もその中の１つだ。規模は小さかった。鉱床は蛇紋岩中の正マグマ鉱床である。付近の三角点のある小山の頂上付近に規模の大きな露頭があったようで，その露頭に向かって西側から２か所，東側から１か所坑道が掘られている。地図は西側の坑口の１つと思われることから，別の坑口が西側に1つ，東側にそれぞれあるものと考えられる。採掘量は２，０００～３，０００ｔとされている。クロムの品位は３２～３６％，平均３３％で，周りのクロム鉱山に比べ高く，クロム苦土鉱よりクロム鉄鉱が多かったようだ。また，クロム鉱物は塊状鉱であり，斑状鉱は見られないようだ。現地は小山の西斜面にあり，斜面にズリが堆積している。またズリの横には埋まりかかった坑口が見られる。ズリ中で見られる鉱物は，クロム鉄鉱，クロム苦土鉱，方解石，菫泥石，忍石などである。ズリを登った上には未舗装の林道が通っているが，この林道の入口やどこに向かって延びているのかは不明である。林道を切り開く際に削ったと思われる斜面には透輝石が多く見られる。透輝石は灰色の結晶面が見られるものが見られる。他に母岩中に点々とくすんだ薄緑色の鉱物が見られるが，この鉱物の分析を行ったところやはり透輝石であり，２つのタイプの透輝石が見られる。