[所在地]広島県福山市新市町大字常

  開坑は江戸時代末期と伝えられている。銅を採掘した鉱山である。地元の人の話によれば大正から昭和初期にかけて稼行していたということであり,閉山もしくは休山はこの頃だと思われる。地元の人はこの地域を金黒(かなくろ)と呼んでおり,鉱山に縁のある場所だということが推察される。府中市北部〜福山市北部にかけては銅,亜鉛を採掘した鉱山がいくつかあり,この鉱山もそれらの1つである。閃雲花崗岩中の中温の熱水鉱脈鉱床と思われる。鉱山は集落を上っていった里山の細い道沿いの小さい沢を登った所にある。付近は鉱山跡といった感じがない。この鉱山跡からさらに尾根に向かって登っていくと送電線の鉄塔があり,鉱山付近はこの鉄塔の管理道のようにもなっている。鉱山跡だと分かったのは,地元の人の話と点在する転石に鉱化作用が見られたことからである。 さらに管理道のような所を少し掘ってみると鉱石が現れ,埋められていることが分かる。周囲には明らかに埋められ植林されたような所や土地が窪んで坑道が潰れた跡のように見える所がある。転石には黄銅鉱,黄鉄鉱などの金属鉱物が見られるが,その他の金属鉱物は見られなかった。二次鉱物はブロシャン銅鉱, 擬孔雀石が見られるが,ほとんどは擬孔雀石である。擬孔雀石は青っぽい鮮やかな緑色をしており,ほとんどは皮膜状であるが,中には房状になっているものも見られる。東京地学協会発行の「日本鉱産誌」によれば閃亜鉛鉱も産出したようで,鉱石の品位は銅8%,亜鉛18%となっている。転石は黒雲母が多くグライゼン化したものが多く,一部花崗岩も見られる。
 
周囲の植林部分は掘り返さないよう,また管理道も掘り返す場合,必要最小に止め,必ず埋め戻すよう注意しなければならない。