[所在地]広島県廿日市市大野
発見の詳細は不明だが、地質調査所発行の平成11年に記載された5万分の1地質図幅地域地質報告「厳島地域の地質」によれば1930年〜40年の頃に稼行し、精鉱約2t出鉱したとの記載がある。参考となる資料は他には、中国新聞社発行「中国地方地学事典」があるが、こちらの資料には沿革は見られない。鉱山名は稼行当時の村名である大野村に由来するものと思われる。タングステンを採掘した鉱山である。中生層黒雲母花崗岩中の高温熱水鉱脈鉱床でグライゼン化した部分も見られる。脈幅は平均20cmだったようだ。現地は登山道に沿って施設跡、坑口、ズリなどが見られる。坑口の前にもわずかながらズリが残っている。「厳島地域の地質」では、主要鉱物は黒色板状結晶の鉄重石とあり、他に記載されている鉱物は金属鉱物では黄銅鉱、黄鉄鉱、輝水鉛鉱が、二次鉱物では孔雀石、藍銅鉱、珪孔雀石が、脈石鉱物は石英、白雲母が主で氷長石を伴うと記載されている。顕微鏡大ではあるが、閃亜鉛鉱、白鉄鉱、マッキーノ鉱が確認されている。また含ビスマス方鉛鉱、ガレノビスムト鉱、アイキン鉱も確認されている。一方、「中国地方地学事典」もほぼ同様の鉱物名が記載されているが、蛍石の記載とともに水晶の美晶を産したとも記されている。現地で確認できた鉱物は、坑口前のズリで、方鉛鉱、硫砒鉄鉱、スコロド石、シャモス石(緑泥石類)である。坑口から登山道を登った付近にもズリが見られるが、目立つ鉱物は見られなかった。鉄重石やその他の鉱物があまり確認できなかったことから他にもズリが残っているのかもしれない。 |