[所在地]山口県美祢市美東町長登〜大田
発見は奈良時代と伝えられ,この鉱山の銅は奈良の大仏にも使用されており,「長登」は「奈良上り」に由来している。その後も江戸時代から昭和35年の閉山まで脈々と銅を採掘していた。明治時代にはコバルトが発見され昭和時代にはコバルトも採掘されていた。日本でコバルトが採掘された鉱山は数少ないが,その中でも結構な量を産出していたため貴重な鉱山であった。烏帽子,伊森,長登,花ノ山,大切,水溜の諸鉱床があった。平成15年には国の史跡として指定されている。元々この地域は石灰岩台地が広がっており,そこに花崗岩マグマが貫入し鉱床が形成された。花崗岩と石灰岩の接触交代鉱床(スカルン鉱床)である。上の風景写真は鉱山の南側に位置する烏帽子坑の坑口で,地図も烏帽子坑の位置を示している。この北には低い山があり,山を隔てた所に長登鉱山のその他の鉱床の採掘跡や精錬を行った遺跡などがある。また山の斜面にはズリが点在し,他にも大きな褐鉄鉱の露頭などが見られる。烏帽子坑はコバルトを多く産出することで有名で,坑口の前が平らになっておりそこを掘ると輝コバルト鉱,コバルト華などが見られる。輝コバルト鉱は塊状のものが多いがピンク色を帯びている。北にある伊森坑は小さいながらも結晶が見られるものがあるが,色があまりピンク色を帯びていない。量的には烏帽子坑の方が多いようだ。烏帽子坑では黄銅鉱,磁硫鉄鉱,磁鉄鉱,孔雀石,灰鉄ザクロ石,灰鉄輝石などが見られる。他の鉱床でも同様のものが見られるが,他にも斑銅鉱,四面銅鉱,閃亜鉛鉱,方鉛鉱,硫砒鉄鉱,輝蒼鉛鉱,珪灰鉄鉱,珪孔雀石,石英,緑簾石などの鉱物が見られるようだ。 |