[所在地]山口県阿武郡阿武町大字木与

 発見の時期,稼行の時期について,鉱山関係や鉱床関係の資料が見当たらないため不明であるが,他の近隣の蝋石鉱山と同じ時期の昭和中期ごろに稼行したと考えられる。蝋石を採掘した鉱山である。中生層珪質岩中の熱水性の蝋石鉱床である。鉱山は集落から山に向かう車道の終点から沢沿いの山道を進んで行った所にあり,沢沿いにズリが広がっている。このズリがある採掘跡は小規模である。車道の終点付近にも採掘跡がありこの鉱山と同一のものかどうかは不明である。ズリの奥にも以下の鉱物が見られることがあることから奥にも採掘跡があったものと思われるが,薮がひどくなっていることから詳細な調査は行っていない。この鉱山は様々な燐酸塩鉱物を産出することで有名であり,多くのコレクターが県内外から訪れている。見られる鉱物は黄鉄鉱,赤鉄鉱,金紅石,板チタン石,コランダム,鉄明礬石,鉄天藍石,天藍石,燐灰石−F,燐礬土石,トロール石,スバンベルグ石,トパズ,紅柱石,葉蝋石,カオリンなどである。また鉱物採集仲間はフローレンス石−Ce,クランダル石を採集している。その他,重晶石,ダイアスポア,デスティネツ石,ゴルセイ石,ゴヤ石,バリシア石なども産出したようで,肉眼鑑定では不明な鉱物が多い。黄鉄鉱は微細な結晶が鉱染状に入っていることが多く,数mmの白い紅柱石の間や鉄天藍石の近くにも見られる。金紅石は黒色に近く顕微鏡サイズのものが多い。鉄天藍石は淡い青色のものが多くみられるが,時に微細ではあるが濃紺色のものが見られることがある。燐礬土石は見分けがつきにく いが璧開面が強い光沢を示す。トロール石は白色〜淡青色でしばしば八面体の結晶を成しているものが見られる。トロール石の結晶は非常に稀のようだ。紅柱石は名前とは異なり,微細な白色柱状のものが集合したものが見られる。現在,未舗装の車道部分の補修工事により通行止めになっているため現地へ行くことができなくなっている。