[所在地]山口県岩国市二鹿

 木下亀城氏著「九州鉱山学会誌第10巻 山口県喜和田鉱山付近の地質鉱床」には発見の詳細は不明で,江戸時代後期に活況を呈したと記載されている。明治時代に入り錫を採掘したが振るわず,明治44年からタングステンを対象として採掘を始めると盛況となり,昭和時代に入っても稼行を続け,平成4年まで稼行した。平成19年には坑内やズリに残っていた鉱石を集め出荷した。また,有料で入山し鉱物採集することができた時期もあった。タングステンを採掘した鉱山である。この地域では玖珂鉱山や藤ケ谷鉱山とともに大きな鉱山の1つである。中生層礫質泥岩及び泥岩中の接触交代鉱床(スカルン鉱床)であるが,石英脈中にも鉱床が見られることから中高温の熱水鉱床も伴っているようだ。鉱山は集落の西側の山中にある。地図上の施設の1つは鉱山資料館跡である。この資料館に行く途中,資料館のある山を所有する地主さんが作業をされていた。許可をいただき山に入ると大きな施設や送電設備が見られた。付近に小規模なズリも見られたが目ぼしい鉱物は見られなかった。地主さんの話によると主な採掘場は,山の向こう側だったようだ。道を戻り林道を西に進むと通行禁止の柵が見られた。鉱山の主な施設,採掘場はこの奥にあるものと思われる。この地点は谷になっており,北に進むと沢に降りる道があり,沢沿いの道の終点付近に小さいながらも小高いズリが見られた。ズリ中にはわずかながら灰重石を含む鉱石が見られる。資料によれば産出鉱物は灰重石の他に,黄銅鉱,黄鉄鉱,磁硫鉄鉱,硫砒鉄鉱,輝水鉛鉱,蛍石,錫石,石英,方解石,燐灰石,灰礬ザクロ石,灰鉄輝石,緑泥石類などである。

 現地は山深く,付近で熊の出没情報が見られることから鈴などの鳴り物は必携である。また早朝や夕方などの時間帯や秋などの熊の出没頻度が高い時間,時期は避けたほうが良さそうだ。