[所在地]山口県岩国市周東町獺越

 発見の詳細は不明である。吉村豊文教授記念事業会編集発行、九州大学理学部研究報告、吉村豊文氏記載の「日本のマンガン鉱床補遺」に久杉鉱山蔵目木坑・蔵目喜坑との記載があり、詳細な位置図も示されている。資料名は不明だが蔵目木鉱山と記載されたものを見た記憶があり、同じ鉱山と考えられ、単独で稼行された時期や久杉鉱山の支山として稼行した時期があるものと思われる。マンガンを採掘した鉱山である。山口県下松市から広島県大竹市にかけて数多くのマンガン鉱山が存在していた。この鉱山もその中の1つである。この付近のマンガン鉱床ではまずまずの規模で採掘されたようだ。中生層の玖珂層群のチャート中の層状マンガン鉱床だが、花崗岩の貫入による熱変成作用を受けているようだ。現地は南北に縦長の里山の西斜面の8合目辺りに位置している。行きは里山の北端から西側斜面をトラバースしながら進んで行ったが、斜面が急過ぎていつ滑落してもおかしくないような行程だった。鉱山道が不明なため現地は分かりにくい。ただ露天掘りしたような跡や坑口が見られたり、黒いマンガン鉱石が点在していることから鉱山跡だと一見して分かる。ズリで見られた鉱物は、満礬ザクロ石、単斜鉄末野閃石、パイロクスマンガン石などである。単斜鉄末野閃石は多く見られ、結晶が確認できるものが多い。資料によれば5cmの結晶のものも見られ、他産地には見られない好標本を得たとも記載されている。帰りは鉱山から谷に向かって急斜面を降り、水道施設と思われる建物付近で川を渡り県道に出た。こちらも危険を伴うがこちらの方が現地に行くには良いと思う。ただクマの生息域で滑落の可能性ありと危険性大である。