[理想化学式] CuBiS
 銅とビスマスの硫化鉱物である。色は鋼灰色で金属光沢を示す。直方晶系(斜方晶系)である。結晶は海外では短柱状,粒状のものが見られるが,国内では塊状,斑状のものが多く,一般的に面積の大きいものは少ない。銅とビスマスの硫化鉱物は他にも色々な種類があり,肉眼鑑定はやや難しい。中温~高温の熱水鉱脈鉱床に産出することが多い。黄銅鉱,斑銅鉱,輝蒼鉛鉱,エンプレクト鉱などと共生することが多い。硬度は2~3 ,比重は6.3~6.7とされている。ドイツのバーデン=ヴュルテンベルク州のウィチヘンが名前の由来だそうだ。海外ではドイツ,スウェーデンなどで見られる。日本では静岡県の河津鉱山などで産出し,その他所々の鉱山で顕微鏡大の大きさで産出する。顕微鏡大であれば数か所で産出が報告されている。伊茂岡鉱山は植林中に平らになった部分があり表面の腐食土を取り除くとズリが堆積している箇所がある。このズリ中に花崗閃緑岩が含まれている。ウィチヘン鉱は花崗閃緑岩中に通常30mm以下の斑状を成して産出した。ウィチヘン鉱が入っている花崗閃緑岩には斑銅鉱やブロシャン銅鉱あるいは薄い黄色を成す泡蒼鉛と共生しているものが多い。また近くの羽出鉱山では輝蒼鉛鉱,クルプカ鉱などとともに電子顕微鏡下でミクロン単位のウィチヘン鉱を確認している。拡大写真では上部のやや暗い鋼灰色の斑状のものが本鉱である。この標本は裏側にも10mm程度のくすんだ光沢のウィチヘン鉱も付いている。



                                                
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