[理想化学式] (Cu(CuFe)As13
  銅,鉄及び砒素を主とする硫化鉱物で,銅,鉄の代わりに銀,亜鉛,水銀が,砒素の代わりにアンチモンが置き換わることがある。銀,亜鉛,水銀,アンチモンが卓越するものはそれぞれ別種となる。色は鋼灰色~鉄黒色である。等軸晶系であり,結晶質のものは正四面体を成す。その他,多面体結晶のものも見られる。硬度は3~4.5,比重は4.6とされている。共生鉱物は黄銅鉱,閃亜鉛鉱,方鉛鉱,黄鉄鉱,方解石,菱鉄鉱,蛍石,石英などである。最近まで単に砒四面銅鉱となっていたが,鉄,亜鉛が一定量占めていることから鉄砒四面銅鉱,亜鉛砒四面銅鉱と分類されるようになった。イリジウムとオスミウムを発見し,ダイアモンドが炭素であることをつきとめたイギリスの科学者であるスミソン・テナント氏に敬意を表したイギリスの地質学者であるウィリアム・フィリップス氏により名付けられたそうだ。海外ではドイツ,イタリア,スペイン,ペルーなどで産出が確認されているが,中国,アフリカ大陸,カナダ,メキシコ,オーストラリアでは今のところ産出は確認されていない。日本では砒四面銅鉱とされるものは愛媛県の別子鉱山,兵庫県の生野鉱山,秋田県の小坂鉱山,釈迦内鉱山などで産出したという記録がある。金生鉱山ではズリ中の褐鉄鉱に汚染された石英に見られる。拡大写真ではくすんだ灰鋼色で点々と付いているものが本鉱である。顕微鏡写真では灰鋼色の金属光沢を成している。この度成分分析を行ったところ鉄砒四面銅鉱であることが確定した。四面銅鉱は砒素とアンチモンが様々な割合で含まれ,成分の多い方で種類が決まるが,この標本の分析結果はほとんどアンチモンが検出されず端成分に近い鉄砒四面銅鉱だった。金生鉱山では鉄安四面銅鉱,亜鉛安四面銅鉱,鉄砒四面銅鉱が見られるが,鉄砒四面銅鉱は光沢が鈍くやや暗い感じがする。

                                                
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