[理想化学式] CuFeSnS
 銅,鉄,錫の硫化鉱物である。褐錫鉱と含有元素がほぼ同じで似た理想化学式になっているが,褐錫鉱に比べ錫の含有量が若干少ない。色は褐錫鉱をさらにオレンジ色味を強くしたような鋼色で金属光沢を示すが,光線の具合によっては赤銅色に見える場合がある。正方晶系である。微細なものが多いためはっきりした結晶を示すものは非常に稀で塊状,粒状を示すことが多い。熱水鉱脈鉱床,気成鉱床などに産出する。黄銅鉱,斑銅鉱,安四面銅鉱,黄錫鉱,褐錫鉱などと共生することが多い。硬度は3.5〜4とされている。実際の比重が掲載されている文献は見当たらないが計算上の比重は4.7とされている。オーストラリアの地質学者で南極の探検家でもあるダグラス・モースン氏が名前の由来となっている。オーストラリアのニューサウスウェールズ州のティンガにあるロイヤル・ジョージ鉱山のものが模式標本とされている。海外では中国,オーストリア,アメリカ,オーストラリアなど各国で見られるが,顕微鏡大のものが多く肉眼で確認できるのもは少ない。日本では兵庫県の多田鉱山,同じく兵庫県の生野鉱山,明延鉱山,島根県の都茂鉱山などで産出が確認されている。金生鉱山のモースン鉱は粗い石英中に産出する場合が多く,黄銅鉱,斑銅鉱,安四面銅鉱などと共生するが,ほとんどは褐錫鉱と共生している。金属鉱物としては独特の色合いをしている。褐錫鉱を見つけ出すことができればその周辺を注意深く観察することによって色合いから探し出すことは可能である。拡大写真では分かりづらいが,顕微鏡写真では周辺部の明るいオレンジ色を帯びた褐色のものが本鉱である。EDS分析を行った所,銅,鉄,錫,硫黄の構成元素比率(At%)がほぼ理想化学式に近く,構成元素比率が褐錫鉱と異なることからモースン鉱と同定した。

                                                
MENUページに戻る   前のページに戻る