[理想化学式] (Pb,Ag)Bi
 銀,鉛とビスマスの硫化鉱物である。理想化学式は文献によって様々な記載となっている。銀,鉛の部分にビスマスが含まれている理想化学式を記載しているものも見られる。これは銀,鉛の一部がビスマスに置換することがあるためと思われる。色は灰鋼色,鉛灰色または黒鋼色である。灰鋼色のものは色が明るく強い金属光沢を示す。直方晶系(斜方晶系)である。結晶は短柱状,針状または塊状である。高温の熱水鉱脈鉱床,気成鉱床などに産出する。黄銅鉱,閃亜鉛鉱,方鉛鉱,硫砒鉄鉱,コサラ鉱などと共生することが多い。硬度は3.5〜4.5,比重は7.2とされている。チェコの化学者でノーベル化学賞を受賞したヤロスラフ・ヘイロフスキー氏が名前の由来だそうだ。1971年に命名されたようで比較的最近発見された鉱物である。海外ではオーストリア,チェコ,スロバキア,ルーマニアなどで見られる。日本では福島県の八茎鉱山で産出が確認されている。大和鉱山では石英中に産出する場合が多い。大和鉱山のビスマスを含む鉱物で石英中に産出するものは他にはコサラ鉱,リリアン鉱などがある。ビスマスを含む金属鉱物は独特の色合いがあるように感じられ,ビスマスを含んでいそうだというのは何となくわかるが,鉱物種の特定は難しい。似た色をした方鉛鉱も多く見られるが,慣れれば方鉛鉱との区別は容易にできる。拡大写真のヘイロフスキー鉱は塊状になっており,石英中に散らばっている暗灰鋼色の部分である。顕微鏡写真では全体がヘイロフスキー鉱で塊状となっており結晶は見られない。SEM像でも塊状になっているのが確認できる。EDS分析を行った所,銀,鉛,ビスマス,硫黄が検出された。砒素は副成分または鉛の誤認の可能性がある。X線回折分析を行たっところ,ヘイロフスキー鉱のピークとほぼ一致しており,他の類似鉱物とは全く異なった結果となったことからヘイロフスキー鉱との同定は妥当と考えられる。

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