[理想化学式] MnSb
 マンガン,アンチモンの硫化鉱物である。ベルチェ鉱の鉄がマンガンに置換され,マンガンが鉄より卓越したものに該当する。色は暗い灰鋼色で金属光沢を示す。ベルチェ鉱より色が暗いような感じを受けるがあまり当てにならない。直方晶系(斜方晶系)である。結晶はベルチェ鉱と同様に針状または毛状結晶を示すものと思われるが,はっきりとした結晶のものを目にする機会はほとんどない。低温の熱水鉱脈鉱床に産出する。鶏冠石,雄黄,辰砂,黄鉄鉱,輝安鉱,自然金などと共生するとされている。硬度は3.5〜4とされている。実際の比重が掲載されている文献は見当たらないが計算上の比重は4.5とされている。ロシアの地質学者でありロシア鉱物学社会の名誉職であったオネシモ・イエゴロビッチ・クラー氏が名前の由来となっている。ロシアのスベルドロフスク州のセロフスキー地区,チューリャ川にあるボロンツォフスコエ金鉱床のものが模式標本とされている。海外ではロシア,カナダで見られる。今のところ世界では3か所しか産出例がない。日本では島根県の豊稼鉱山が唯一の産地となっている。豊稼鉱山はスカルン鉱床であるが熱水鉱床と考えられる部分も見られ,こうした熱水鉱床部分から産出するものと思われる。拡大写真では薄灰色の部分の細かい灰色部分が本鉱である。豊稼鉱山では菱マンガン鉱,ベルチェ鉱と共生している。顕微鏡写真では暗い灰鋼色の部分が本鉱で,白色の部分は菱マンガン鉱である。EDS分析を行った所,誤差を考えても明らかに鉄よりマンガンが卓越していることからクレル鉱と同定した。この標本の他に鉄とマンガンがほぼ同量のものも見られ,ベルチェ鉱ともクレル鉱ともどちらであるか判別がつかないような中間的なものも見られた。ただいくつか分析を行ったが圧倒的にベルチェ鉱であることが多い。

                                                
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